今後の「ハイブリッド」の展示会とは:リアルの展示会プラス、ネット上にも展示会会場を複製せよ(デジタルツイン)

展示会が開催できなくなり、もう暫く経つ。
代替手段として出てきたのが、オンライン展示会(バーチャル展示会)だ。

オンライン展示会もバーチャル展示会も、指し示すものは同じ、この2つの言葉の差は無く使われている。そしてオンライン展示会は、大きく2つのタイプに分けられる。3次元のブースを提示して、展示会に来たかのような体験をしてほしいとの想定で構築されたものと、従前の展示会の出展者詳細ページを並べたもの、の2タイプだ。

ハイブリッドの展示会とは、上記の2つとも異なるものだと考えている。

展示会の「賑わっている感」が感じられないのだ。

出展者の熱さが、人となりが伝わらないならば、従来からずっとある、自社のホームページで良い。

来場者のメリットも少ないが、主催者のメリットも少ない。主催者の足元の地盤、リアル展示会の収益に直結していないのだ。

例えば、3万人集客の展示会を仮定してみよう。

来場者が50%減の1万5千人になったとする。

現在ではおおよそありそうな数字である。そうなるとどうなるか。募集要項に実績として、2019年30,000人の隣に、2020年15,000人と書かねばならない。もちろん、カッコ付きで「コロナウイルス感染症予防対策のため」と追記しても良い。

となると、出展営業時に、出展者がどうしようかなぁと心のなかでつぶやくだろうなということは今からでも想像できる。出展者もどうなるか計れないのだ。

この対策には、ハイブリッドの展示会を実施するべきである。

しかしながら、上記の2つのタイプではない、デジタルツインという方法で。

デジタルツインは、リアルとオンラインが双子のような形で、そっくりだが独立したシステムとして存在することだ。

リアルの賑わい感を、デジタルにも持っていく。奥行きのないPDFの資料置き場や、変な奥行きのCG世界ではないのだ。

オンラインでは、まず、賑わいのあるブースに入ったかのような形で、動画で商品説明の概要を聞く。

そしてそれに対する自分の質問を、チャットやテレビ会議システムで聞く。テレビ会議システムの場合には、見た動画の説明員が対応すると、聞く側としても心理的ハードルが下がる。「さっき動画を見たのですが、ここの部分、ウチではこうしたいのですが可能ですか?」そういう質問が自然に出てくるように設計する。

もちろん、リアルの展示会にコンバージョンを持っていきたい場合もあるだろう。その場合は、オンライン展示会は、会期前のコンテンツと、会期後のコンテンツを変えるのが良い。会期前はアウトラインの情報を並べ、来場者があたりを付けられるようにしておき、会期が始まったら、あたりを付けていたターゲットに向かって、リアル的なコンテンツを当てるのだ。

そうすることにより、「今開催している感」「盛り上がりのイベントに参加している感」が感じられ、体験がより濃くなっていく。

必要なのは、適時の通知と、レコメンデーション。その人に必要な情報が、整理されて届くことだ。

物が動くときには(サンプルなどの送付・商品の発注)、できるだけ迅速に動かせるように用意しておく。

オンラインを使って試食もやろうと思えばやれる。送ればよいのだ。郵送料は、自社で負担しても良いし、バイヤーに持ってもらっても良いだろう。展示会会場で、他社と同梱の提携でも良い。同じ会場にいるので、展示会終了後17時に、会場のヤマト運輸のカウンター前まで持ってきて一つの箱にまとめ、発送する。後日テレビ会議システムで繋ぎ、試食してもらいフィードバックをもらう。

デジタルツインにする資金は、日経電子版方式で行う。(「日経電子版方式で」と説明すると、ITに慣れていない上層部も理解できる良いキーワードとなる)。リアル(つまり紙)は4900円、リアル+電子版にするとプラス1000円だ。

この電子版出展料をベースとして、リアル展示会を展開していく。4900円を払った後だと、1000円は安く感じるのだ。

こうして確保した予算の使いみちの内訳は、プラットフォーム代と広告費だ。
プラットフォームは、来場者登録、出展者情報データベース、来場者への誘引メールシステムなどの機能を備えたWEBシステムだ。チャットや会議システムは、内部で構築すると高くつくので外付けでも良い。

後は広告費。ネットなので、広告をかければかけるほど正比例に来場者が増える。前述の、半減した来場者数を埋めるだけの広告費を用意しておけば良い。

単価100円とすれば、1万5千人は150万円だ。

これにより、来場者数3万人は達成でき、前年との比較が容易となる。

また、ネットでのプレゼンスが上がるので、日本全国レベルでの情報の浸潤が可能となり、展示会ブランドの価値の増大、そして未来の出展者のリーチが上がる。

コロナの影響が低下するに連れ、リアルは3万人に戻り傾向に増加し、オンラインもそれにつれて出展者数も増加し、オンラインの訪問者数も増えていく。つまり、デジタルツインの双子が、大きく育っていくのだ。

これにより、毎年微増を続けていた来場者数の伸びは加速し、2年後、3年後の数字は大きく伸びていく。「良いスパイラル」に入っていくのだ。

そういう良い絵を描けるデジタルツイン化を、パンフ置き場やCG世界の方向ではなく、進めていくべきだと思える。

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酒井統史

展示会エンスージアスト。
インターネット展示会.tvファウンダー。