ブース内で動画をどう活用するか ― 10の実践パターン
展示会のブースは、限られた空間・時間で自社の魅力を最大限に伝える「ステージ」です。その中で「動画」は、言葉よりも速く、写真よりも深く、来場者にメッセージを届けることができる最強のツールです。
ここでは、実際の出展現場で成果を上げている10の動画活用法を詳しく解説します。
① オープニング動画:足を止める「1分の世界観」
展示会では「最初の3秒」が勝負です。通路を歩く来場者があなたのブースの前で立ち止まるかどうかは、瞬間的な印象で決まります。そのため、最初に流す「オープニング動画」は、製品説明よりもまず“世界観”を伝えることに重点を置きます。
背景に流す音楽やカットのテンポ、ブランドカラーを使った映像演出などを組み合わせ、「この会社は何か違う」と感じさせることが目的です。文字情報は最小限に、インパクト重視で構成します。
理想は1分以内。最初の5秒でロゴ、次の10秒で製品の特徴を強調し、最後にキャッチコピーを印象的に見せる。動画をループ再生することで、絶えずブースの前に「視覚的な動き」が生まれ、自然と人の流れを止める効果があります。
また、同じ映像を展示会後にSNSや公式サイトでも使えるように設計しておくと、ブランド統一感が出て効果的です。
② 製品デモ動画:説明の手間を減らす
展示会では来場者が同時に多数訪れるため、スタッフが全員対応できない瞬間が必ず発生します。その際、ブース内のモニターで製品デモ動画を再生しておくことで、営業トークが届かないお客様にも製品の仕組みや優位性を伝えることができます。
特に機械製品やITソリューションなどは、静止画像では分かりにくい「動作」「反応」「スピード」を映像で見せることが重要です。例えば、工場内での稼働映像、システム画面の操作デモ、加工工程のタイムラプスなど。これらを実際の現場音とともに流すとリアリティが高まります。
また、動画を見た後に担当者が質問を受ける形にすると、説明の時間を半減できます。さらに、製品の特徴を箇条書きでテロップ化しておくと、英語圏やアジア圏の来場者にも伝わりやすくなります。
ポイントは「静止パネルでは伝わらない部分」を映像化すること。製品の質感・音・動きは、動画ならではの訴求力です。
③ 導入事例動画:信頼を構築する
展示会での来場者の関心は「実際に導入されているのか」「他社の評価はどうか」です。そこで有効なのが「導入事例動画」です。
実際のユーザー企業の担当者が登場し、導入の経緯や成果を語る映像は、何よりも説得力があります。特にBtoB業界では、第三者の声が信頼を左右します。
動画構成は、「課題→導入の決め手→効果→今後の展望」という流れが効果的。数字を交えて成果を示すことで、信頼性がさらに高まります。
展示会では、スタッフが不在の時でもこの動画を流すことで「実績の証拠」を示せます。また、ブース内にQRコードを設置し、動画視聴ページに誘導するのも効果的です。
加えて、業種別の事例を複数用意しておくと、来場者の業界に合わせた紹介ができます。「同業他社が導入している」という事実ほど、購入を後押しする要素はありません。
④ 社長・開発者メッセージ動画:ストーリーで印象付ける
「人が語る言葉」ほど、心に響くものはありません。製品の性能を伝えるよりも、「なぜこの製品を作ったのか」「どんな想いがあるのか」を社長や開発者が語る動画は、展示会で強い印象を残します。
特に日本企業の場合、技術力の高さをアピールしがちですが、欧州・中東・アジアの来場者にとっては、「人柄」や「情熱」を感じられる映像の方が記憶に残ります。
動画は2〜3分程度で十分。真剣に語る表情や職場の映像を挟むことでストーリー性を持たせます。
また、社長が現場に不在でも「動画で話している」だけで、来場者との距離が近づきます。さらに、海外展示会では英語や現地語字幕を付けることで、国境を越えて伝わるメッセージになります。
「この人の会社だから信頼できそう」と感じてもらえることが、最も大きな効果です。
⑤ 外国語字幕版/多言語動画:海外来場者対応
国際展示会では、通訳スタッフの人数には限りがあります。そこで、外国語字幕付き動画を準備しておくと、ブースの対応力が一気に上がります。
英語、中国語、フランス語など主要言語で字幕を付けた動画を用意すれば、来場者が自分の言語で製品を理解できます。音声を差し替えるのではなく、原音+字幕にすることで臨場感を保ちながら多言語対応が可能です。
ポイントは、「通訳がいなくてもブースが回る」仕組みを作ること。例えば、タブレット端末で多言語版を切り替え再生できるようにしておくと、スタッフ一人でも国際対応が可能です。
また、展示会後には同じ動画をウェブサイトやYouTube、WorldTradeShow.tvなどで公開すれば、世界中のバイヤーに再利用できます。
“動画の多言語化”は、翻訳費用以上の価値を生み出します。それは「海外バイヤーが安心して接点を持てるブース」に変える投資なのです。
⑥ 製造現場・舞台裏動画:信頼と技術力を可視化
「どんな工場で作られているのか」「品質管理はどうなっているのか」――展示会では、こうした質問が頻繁に寄せられます。
そこで効果的なのが、製造現場や社内の様子を紹介する「舞台裏動画」です。
例えば、製造ラインの流れ、職人の作業風景、品質検査の手順などを撮影して編集することで、信頼感を強く打ち出せます。単に「高品質」と言うよりも、「見せる」ことで証明するわけです。
この手の映像は、BtoB企業だけでなく、食品やコスメ、建材メーカーなどにも応用可能。製造環境をオープンにすることが、安心感の訴求になります。
また、現場スタッフが登場して「こだわりポイント」を語ると、より人間味が増します。
展示会後には、企業紹介や採用PRにも流用できるため、一度作っておくと長期的に使える“資産映像”にもなります。
⑦ イベント連動動画:ライブ感を演出
展示会では、プレゼンテーションや実演イベントを行う企業も多いですが、その間の待機時間や準備中に「静止状態」になってしまうのはもったいない。
イベントの合間に動画を流しておくことで、来場者を飽きさせず、ブース全体に一体感を生み出せます。
たとえば「前回の展示会ダイジェスト」や「製品開発の裏話映像」を流すと、イベント開始前から注目が集まります。
さらに、イベント映像をリアルタイムでSNSに投稿したり、次回イベント告知をエンドロールで流すなど、動画を“ブースの演出装置”として使うのがコツです。
動画が流れている間にスタッフが声掛けをすれば、自然なタイミングで会話が生まれます。
“動いているブース”は、それだけで来場者の印象に残るものです。
⑧ タッチパネル連動動画:自分で選べる体験
来場者が興味を持つ分野は人それぞれ。そこで有効なのが「タッチパネル型の動画コンテンツ」です。
大型モニターやタブレットに複数の動画をカテゴリー別に配置し、来場者が自分の業界や関心分野を選んで再生できる仕組みを作ります。
「食品業界向け事例」「医療向けソリューション」「学校向けパッケージ」など、セグメント別に用意すると最適です。
こうした“自分で操作できるブース”は、受動的な展示から能動的な体験へと変わり、印象が格段に深まります。
さらに、動画再生後に「資料請求」や「名刺スキャン」などの画面を表示すれば、リード収集まで自動化可能。
ブーススタッフが少ない場合でも、タッチパネル動画が代わりに説明員の役割を果たします。
来場者が「自分で理解した」と感じることが、商談の第一歩です。
⑨ SNS/ウェブ連動動画:展示会後のフォロー
展示会が終わった後、最も多い課題が「せっかくの来場者との関係が続かない」ということ。
これを解決するのが、動画とウェブを連動させた仕組みです。
ブース内で視聴した動画にQRコードを付け、同じ内容をオンラインで再生できるようにしておけば、来場者が後日社内で共有したり、上司に説明する際にも役立ちます。
また、展示会終了後に「ご来場ありがとうございました」メールとともに動画リンクを送ることで、記憶を呼び起こし、再関心を喚起できます。
SNS上でも「展示会ダイジェスト動画」や「来場御礼ショートクリップ」を投稿すると、他の潜在顧客にも波及効果があります。
“動画=展示会で終わるもの”ではなく、“展示会から始まるコミュニケーションツール”として再利用する発想が重要です。
⑩ サイレント動画:音が出せない環境でも印象を残す
展示会場では、音量制限や周囲の騒音のため、音を使った演出が制限されることがあります。
そんな環境でも印象を残すのが「サイレント動画」です。
字幕・テロップ・アイコンなどの視覚要素を駆使し、音がなくても理解できる構成にします。
特に「動きのあるテキスト」「アイコンのアニメーション」「リズミカルなカット割り」を活用することで、無音でもテンポと訴求力を維持できます。
また、ブース内の照明や背景色に合わせて動画デザインを最適化すれば、全体の印象を統一できます。
「音を出せないから何もできない」ではなく、「音がないからこそ、見せ方で勝つ」――それがプロの展示戦略です。
結論:動画は「第三のスタッフ」
展示会での動画は、単なる演出ではなく「スタッフの一員」として機能します。
説明、翻訳、プレゼン、信頼づくり――そのすべてを、映像が代行してくれます。
1本の動画を展示会、ウェブ、SNSと展開していくことで、あなたのブースは「3日間限りの空間」から「365日稼働する発信拠点」へと進化します。
動画は、未来の展示会の標準装備です。