海外施工会社の愉快な仲間達@日本 (タンデムの大賀氏による寄稿)

私共は通常海外本市の施工を生業としておりますが、時々海外の施工会社、又はドイツの会社の日本現地法人、輸入代理店のご依頼で、日本での施工のお手伝いをして参りました。

宿泊の手配から始まり、打ち合わせ、現場監理、オープン立ち合い、撤去等をこなし、仕事が完了するわけですが、通常の業務、すなわち海外での施工と違い責任の範囲は限定されます。

通常、海外の施工会社が船便で持ち込んだ部材を使い、彼ら自身が施工するので、施工の責任は基本海外の施工会社が負うことになり、私の責務は何かあった時、すなわち本国での準備不足、部材輸送時の盗難、紛失、破損等で予定していた部材が現場に届かない場合、又はあるべきかたちで届かない場合、日本の規約に合致しない部材があった時等に私共の活躍の場が与えられます。

ですから私共の活躍の場のないのが一番いい状況といえます。車好きの私にとって、東京モーターショーでこの活躍の場のない状況ですともう最高です。会期2週間のショーを満喫できます。

彼らの日本での新しい発見は私共にとっても新しい発見です。

ITMA(繊維機械見本市)が大阪で開催された時の事、ドイツから来た施工会社の二人のマイスターと現場初日の夜、一緒に食事に行ったところ、電信柱、電線の写真を沢山撮っていました。ドイツでは3,000人位の小さな村では一部ありますが、それ以外は電線は全て地下に埋められているので珍しい光景だったのです。

二人のマイスターも大の車好き。その晩、繁華街を歩いていたら駐車場に最新型のメルセデスベンツSクラスの改造車が置いてありました。早速、駐車場に3人で足を運んだところ、やくざ5,6人が駐車場にある事務所のようなスペースから出てきて我々は彼らに囲まれてしまいました。“これはまずい 謝らねば”と謝罪の言葉を述べようとしたら、私に“二人に乗ってもらって下さい”とのこと。ふたりがちゃっかり乗車したところ、“凄い、凄い”と興奮。やくざからどこから来たのか、どうして日本に来たのか等聞かれ、車好きなドイツ人だとわかるといろいろメルセデスの説明を始めました。ドイツで購入したものをイギリスの改造専門の会社に送り、防弾ガラス他を取付け輸入したそうです。懇切丁寧に説明があり、あまりのやさしさに絶句しました。やくざからみてドイツ人は勤勉、実直のイメージがあったのでしょうか。お気に入りの愛車の発祥の地から来たのですから。

ひと昔以上前の東京モーターショーでのこと。その年は中国の施工会社がオペルブース施工を受注、そしてドイツの施工会社がメルセデスブース施工を受注。それぞれ中国、ドイツの施工会社から現場監理、コンサルタント業務の依頼がありました。仕事は結果オーライ、オープン後は遊びモードでしたが、始まる迄は異文化交流の場、異文化理解の場となりました。

最初は中国の施工会社から。社長も現場に来ましたが、その社長の最初のリクエストはオレンジカード(現在のSuicaに相当)購入依頼。いくらのものを、何枚買って誰に渡せばいいかの相談でした。事務局他に配ると言うのです。全く日本では意味ない旨話し、納得してもらいました。メルセデスのブースではドイツから54人の職人が来て二交代、ないし三交代の24時間体制で頑張りました。


されど、予定通り進まず、急遽日本人の職人とアルバイトを何人か雇うことになりました。そこでかつての同盟国同士で争いが起こるとは夢にも思いませんでした。ドイツ人に言わせると、ドイツ人がひとりで運ぶものを何故ふたりで運んでるのか理解できずご立腹。何せ彼らは力持ち。非力な日本人を理解するのは難しいのです。彼らにとって30Kgの展示物をひとりで展示台に置くのは当たり前のことです。

安全に対する基準も違います。ドイツ人は安全靴を履かず仕事する日本人が理解できません。日本人にはドイツ人のヘルメットなしでの高所作業が理解できません。食事も合いません。パンが食べたいのですが、日本のパンは食べられないというのです。ご飯も食べられるけれど毎日はとても無理。セカンドベストで私が選んだのがフランスパン。毎日、2回フランスパンを現場に運んでもらいました。フランスのパン職人指導の下、できたフランスパンは好評でした。

郷に入っては郷に従え。これをお客様に、すなわち海外では日本人のご出展者に、日本では海外から来た愉快な仲間達にそれぞれの国の事情を説明し、理解、納得して頂くのも私共の大切な仕事のひとつと心得、これからも修行を続けていきたいと思います。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: logo.png