SNS動画施策が「伸びない」真の理由――TV局式の成果設計から学ぶ、BtoB動画マーケティングの勝機


近年、BtoB市場においてもSNSや動画の活用は避けて通れない課題となりました。しかし、多くの企業が「動画を作ったものの、再生数が伸びない」「再生はされても、問い合わせ(リード)に繋がらない」という壁にぶつかっています。

その最大の原因は、映像のクオリティでも予算の多寡でもありません。「企画(成果設計)」の欠如です。

本記事では、視聴者の感情を揺さぶり、数十分間テレビの前に釘付けにしてきた「TV局式の番組制作ロジック」を、BtoBのSNS・動画マーケティングにどう転用すべきか、その具体的な手法を徹底解説します。


1. BtoB動画の落とし穴:なぜ「点」の企画は失敗するのか

多くのBtoB企業がSNS動画を始める際、まず「手法」から入ってしまいます。「とりあえずショート動画が流行っているから」「アニメーションの方がわかりやすいから」といった理由で制作を開始しますが、これこそが失敗の入り口です。

1-1. 「再生数=成果」という誤解
BtoC(一般消費者向け)と異なり、BtoB動画の最終目的は「バズ」ではありません。ターゲットとなる決裁権者や担当者が、自社の課題を認識し、解決策として自社サービスを想起(純粋想起)し、最終的に「資料請求」や「商談」へと動くことです。 100万回再生されても、ターゲット外の視聴者ばかりであれば、ビジネス上の価値はゼロに等しいのです。

1-2. 「説明」に終始し、「体験」をさせていない
BtoB動画にありがちなのが、機能やスペックの羅列です。視聴者は「説明」を聞きたいのではなく、そのサービスを導入することで「自分の課題がどう解決され、どんな未来が待っているか」という擬似体験を求めています。この「視聴体験の設計」が抜けている企画は、どれほど高精細な映像であっても最後まで見られません。


2. TV局式「成果設計」:視聴者を動かす3つのインフラ

テレビ業界は「視聴率(滞在時間)」と「CM(行動喚起)」を最大化するために、数十年かけて視聴心理を研究してきました。この知見をSNS動画の企画に落とし込むと、以下の3つの要素に集約されます。

① 冒頭0.5秒の「報酬」提示(アバン設計)
テレビ番組は、放送開始直後の数秒間にその日のハイライトを詰め込みます。これをSNSに転用する場合、冒頭0.5秒から1秒で「この動画を見ることで得られる利益(報酬)」を脳に直接届ける必要があります。

特にBtoBでは、「コスト30%削減の裏側」「失敗しないDXの共通点」など、ビジネス上のベネフィットを瞬時に言語化・視覚化し、「この動画は私に関係がある」と直感させることが重要です。

② 疑問(Q)を提示し続ける「情報の小出し」構造
バラエティ番組などで、CM前に「答えはCMのあとで!」という演出があるのは、人間の「未完了の課題を完結させたい」という心理(ツァイガルニク効果)を利用しています。

動画の構成を以下のステップに分けることで、視聴維持率を劇的に向上させます。

Step 1(Q): 「なぜ、あなたの会社はSaaS導入で失敗するのか?」
Step 2(Aの欠片): 「実は、機能比較の前にやるべき『ある準備』が抜けているからです」
Step 3(深掘り): 「その準備とは、具体的に3つのプロセスに分かれます」
Step 4(結論): 「最も重要なのは、〇〇という視点です」


このように、小さなQ&Aを繰り返すことで、視聴者は気づかぬうちに最後まで動画を視聴し、内容を深く理解することになります。

③ 「逆算型」の読後感設計(ポスト・ビュー・デザイン)
テレビの特番は、視聴者が「明日、学校や職場で話したくなる」あるいは「その商品を買いに行きたくなる」という食後感(読後感)から逆算してキャスティングや構成を決めます。

BtoBマーケティングにおける動画企画も、「見終わった瞬間に、視聴者がどういう精神状態にあるべきか」を定義することから始めます。

「自社の課題が浮き彫りになり、危機感を感じている状態」
「この担当者なら信頼できると、専門性に感銘を受けている状態」
「上司に共有するために、URLをコピーしようとしている状態」


このゴールが明確であれば、動画内のトーン&マナーや、最後に置くべき「CTA(行動喚起)」は自ずと決まります。


3. BtoB特化型:SNSプラットフォーム別の戦術転用

TV局式のロジックは、プラットフォームごとに最適化する必要があります。

YouTube:教育と信頼の蓄積
YouTubeは「能動的な検索」や「関連動画」からの流入が多いため、情報の網羅性と信頼性が重視されます。TVのドキュメンタリー番組のような構成が適しています。

企画の肝: 権威性と実証性。「〇〇業界のプロが教える」「実録・トラブル対応」など、専門的な深さをアピールします。

TikTok / Instagram:気づきの提供
これらは「受動的な視聴」がメインです。視聴者は情報を探しに来ているのではなく、暇つぶしの最中です。

企画の肝: TVのニュース速報やランキング番組のような「インパクト」と「短尺」の両立。15〜30秒で一つの「気づき」を与え、「続きはWebで(プロフへ)」という動線を設計します。


4. 企画を形にするための「5つの重要項目」

BtoB担当者が企画書を作成する際、必ず埋めるべき項目をまとめました。

インサイト(深層心理): ターゲットが夜も眠れないほど悩んでいることは何か?
キラーワード: 専門用語を避け、一瞬でイメージが湧くキャッチコピーはあるか?
情報の独自性: 自社の1次情報(調査データや顧客の声)に基づいているか?
演出の緩急: テロップ、効果音、画角の変化を3秒に1回入れているか?
コンバージョン動線: 視聴後の行動を妨げる「摩擦」はないか?


5. 最後に:動画は「営業担当者の分身」である

BtoBビジネスにおいて、動画は単なる広告ではありません。24時間365日、休まずに自社の魅力を最適化されたロジックで語り続ける「最強の営業担当者」です。

しかし、その営業担当者が「何を話すか(=企画)」が設計されていなければ、どんなに身なり(=映像クオリティ)を整えても、顧客の心は動きません。

「TV局式の成果設計」を取り入れることは、視聴者の貴重な時間を奪うのではなく、視聴者にとって価値ある時間を「提供」することに他なりません。まずは「バズ」への執着を捨て、ターゲットが求める「答え」を、TV番組のようなエンターテインメント性と論理性をもって構成することから始めてみてください。

展示会レポートを受け取りませんか?最新の出展製品情報をお届けします。