インドの現場(タンデムの大賀氏による寄稿)

インドの施工の問い合わせを初めて頂いたのがもう20年以上前のこと。当時はドイツの仕事が売り上げの90%以上、アジアはシンガポールを手掛けたくらいでインドは未経験でした。ご出展者には今迄経験が無いことを伝え、それでも今迄のドイツでの実績を買って頂き、了承を得ました。

インドの施工会社との繋がりがない当時、頼りになるのはシンガポールの施工会社。彼らはアジアをはじめ全世界にネットワークを構築していて頼りになる存在。早速連絡をとり、スタート。施工費はシンガポールのそれと少し安いくらいでしたが今迄の経験で仕事は安心して任せられるので、発注しました。

現場はデリー。全てが物珍しく、ワクワク気分で現場に臨みました。出鼻をくじかれたのは、現場初日。現場に入ったところ、事務局から入手していたホール図面とは異なり、ブース内にあった柱の位置が、1メートルずれているという現実に直面。

早速事務局に行ったところ、“No problem!!”その列にあおったブース全部をを1メートルずらすとのこと。すなわち、両サイドの通路を一方は1メートル削り他方を1メートル増やすとのこと。そんなことが他の出展者が納得するはずがないと思いましたが、実行に移されました。

案の定、通路が狭くなった場所に位置するご出展者は事務局にクレイム。その時の対応は通路を一方通行にして必ず来場者を狭い通路から入場させ”公平館を持たせること。全て場当たり的です。

インドの施工会社のレベルは非常に低く、ある時デリーの展示会ではどこも遅れが出たので事務局がオープンを半日ずらしたこともありました。

ご出展品搬入が遅れるのもよくあることで、得意のブースで初日午前中にご出展品が届かなかった時、そのブースにアテンドしている得意のインドの代理店のひとりが“4日もある展示会で何で初日に出展品が必要なのですか”。一事が万事。得意も絶句し何も言えませんでした。

ベンガロールでは新しいホールで開催される予定でしたが、現場に行ったところ、新しいホールが出来ておらず、仮設テントでホールが構築されたこともありました。

現場には職人が他の国の3倍位来ます。1/3は半分以下のスピードで働く職人の補填。残りの1/3は寝ています。犬も人間同様、のんびり暮らしています。

毎年経験を積み、しっかりとした施工会社も見つけ、今では一番楽しめる現場になりました。ここのカルチャーショックは強烈です。早くインドの展示会も再開されることを願ってやみません。

インド人は根は性格も良く、本当に“いい奴”が多いです。イギリスの無茶苦茶な統治で、徳が失われてしまいました。本当に残念です。

最後に、私が感銘を受けた出来事を。

ムンバイの会場の外で屋台が出ていて、インドカレーを注文。あまりに旨いので、おかわり。その時、前に注文したお兄さんが、他の客対応で、別のおじさんが対応。価格がよく覚えていませんが30円だったのが90円位、そんなイメージ。それを横で聞いていたお兄さんがおじさんに対し、すごい剣幕で怒り、猛攻撃。返金してくれました。翌日以降、そこで注文してもお兄さんは決して代金を請求しませんでした。