ロンドンの展示会運営から世界の「ビジネス接続」企業へ|Clarion Events


Clarion Eventsは現在、英国ロンドンを本拠地に、展示会、カンファレンス、1対1商談イベント、専門メディア、デジタルサービスなどを世界各地で展開するイベント企業である。



2026年1月期のグループ連結財務諸表によると、Clarion Eventsは125のイベント・メディアブランドを展開し、世界12カ国で約2,000人を雇用している。年間では約4万7,500社の出展企業、約133万5,000人の参加者、約1,200社の主要スポンサーとの接点を持つ。



2026年1月期の売上高は5億740万ポンド、営業利益は8,210万ポンドだった。現在はBlackstoneを投資パートナーとする非公開企業であり、同社自身は「世界最大の民間所有のイベント・展示会主催企業」と位置づけている。



しかし、Clarion Eventsは最初から現在のようなグローバル企業だったわけではない。



その原点は、ロンドンのEarls Court Exhibition Centreを拠点とする展示会運営事業にある。そこから独立し、M&Aによって専門展示会を増やし、米国・アジアへ進出し、さらに専門メディア、オンラインBtoBマーケットプレイス、招待制1対1商談などを取り込んできた。



その流れを整理すると、



展示会場に付随するイベント運営

↓

独立した展示会主催会社

↓

専門展示会ブランドの買収・育成

↓

欧米・アジアへの国際展開

↓

専門メディア・デジタルBtoBサービス

↓

1対1商談・コミュニティ型イベント

↓

データ・AIを組み込んだ「接続」プラットフォーム



という変化が見えてくる。



現在のClarion Eventsを理解するうえで重要なのは、「展示会を何本運営しているか」だけを見ることではない。



同社は展示会の本質を「会場を提供すること」から「その産業で価値のある人と人を接続すること」へ広げ、その接続方法自体を複数のビジネスモデルへ展開している。



1. 創業時はロンドンの展示会場を起点とするイベント運営会社だった



Clarion Eventsは公式には1947年創業としている。



一方、現在のClarion Events Limitedにつながる英国法人はCompanies Houseによると1948年6月1日に「Exhibition Units Limited」として設立された。その後、Philbeach Events Limited、P&O Events Limitedを経て、1999年にClarion Events Limitedとなった。



したがって、1947年はClarionが事業上の創業年としている年であり、現存法人の登記上の設立年とは1年の違いがある。



Clarion自身は、EMEAにおける事業の起点についてロンドンのEarls Court Exhibition Centreにあったと説明している。



この時代のClarionにつながる事業は、現在のように独立したグローバル展示会会社というより、展示会場と密接に結び付いたイベント企画・運営機能だった。



創業者については、現在確認できるClarion公式資料では特定の個人を単独の創業者として明示していない。



むしろClarionの歴史は、



ロンドンの展示会場でイベントを企画する組織が、長い時間をかけて独立した展示会企業へ変化した歴史



として捉える方が適切である。



なお、Clarionが現在持つブランドの一部は会社そのものより古い。



同社公式サイトでは、北米のFire & Rescue関連事業の一部について、19世紀の専門業界出版物まで系譜を遡れるとしている。



また、Clarionが現在も所有するLondon International Horse Showも、第二次世界大戦後の1947年に復活した長い歴史を持つイベントである。



この「既存の専門コミュニティとブランドを長期的に育てる」という考え方は、現在のClarionにもつながっている。



2. 2004年の独立が「会場付属のイベント部門」から成長企業への転換点になった



現在のClarion Eventsにつながる最初の大きな転換点は2004年である。



当時ClarionはEarls Court & Olympia Groupの傘下にあった。



同年、Simon KimbleらClarion経営陣がHgCapitalの支援を受けてマネジメント・バイアウトを実施し、Clarionを独立企業化した。



この出来事が重要なのは、単に所有者が変わったからではない。



展示会場グループの一部門から独立したことによって、Clarionは、




  • 新しい展示会を立ち上げる

  • 他社の展示会を買収する

  • 新しい産業へ進出する

  • 英国以外へ展開する



という成長戦略を自社主体で進めやすくなった。



実際、HgCapital傘下となった2004年から2008年までに、Clarionの主要イベント数は約30から65へ増加し、売上高も約3,000万ポンドから5,300万ポンドへ拡大した。



この時期には8件の買収を行い、展示会は世界14カ国で開催されるようになり、米国にも拠点を設けた。



つまり2004年の独立によってClarionは、



「保有会場で展示会を開催する会社」



から、



「有望な専門展示会ブランドを買収・育成し、別市場へ展開する会社」



へ変わり始めたのである。



3. ICEの取得が「特定産業のコミュニティを所有する」戦略を象徴した



独立直後のClarionを現在の姿につなげた重要なM&Aの一つが、2005年のAmusement Trade Exhibitions Group(ATE)取得である。



Clarionは約1,350万ポンドでATEを取得した。



この事業には、後にClarionを代表するブランドとなるInternational Casino Exhibition、現在の「ICE」につながる展示会や、関連する専門出版事業が含まれていた。



ここで重要なのは、Clarionが単に一つの展示会を取得したのではないことである。



取得したのは、




  • カジノ・ゲーミング事業者

  • ゲーム機・システム企業

  • 規制・業界関係者

  • 専門メディア

  • 世界各国から集まる業界関係者



によって構成される専門市場のコミュニティだった。



ICEはその後、ロンドンからバルセロナへ開催地を移しながら、現在もClarionの主要な「Super Brand」の一つとなっている。



Clarionの現在の成長戦略では、大規模で専門市場に欠かせないイベントを「Super Brands」と位置づけている。



2026年1月期には、こうしたSuper Brandsがグループのcontributionの63%を占めた。



つまり2000年代に始まった、



「有力な専門イベントを取得し、その業界で欠かせないブランドとして育てる」



という戦略が、現在も事業の中心に残っている。



4. プライベートエクイティ傘下でM&Aと海外展開を加速



2008年、ClarionはHgCapitalから米国の投資会社Veronis Suhler Stevenson(VSS)へ売却された。



この段階ですでにClarionは英国だけの展示会会社ではなくなっていたが、その後も「buy and build」、つまり買収を通じて事業基盤を広げる戦略が続いた。



2015年にはProvidence Equity PartnersがClarionを取得した。



当時Clarionは500人以上を抱え、欧州、北米、中南米、中東、アフリカ、アジア太平洋へ事業を展開し、売上高は1億ポンドを超える規模になっていた。



2017年にはBlackstoneがProvidenceからClarionを取得した。



この時点でClarionは世界13拠点に約950人を持ち、50カ国以上で180を超えるイベント・展示会を運営していた。



Blackstoneは買収時から、ClarionをM&Aによってさらに国際展開できるプラットフォームとして位置づけていた。



そして実際に、この後Clarionの事業構造を大きく変える買収が続く。



5. 2018年のGlobal Sources統合で「展示会+オンラインBtoB市場」へ



Blackstone傘下となった後の最初の大きな変化が、2018年のGlobal Sourcesとの統合である。



Global Sourcesは香港を拠点に、アジアで展示会を運営する一方、オンライン上で海外バイヤーとアジアのサプライヤーを結ぶBtoBマーケットプレイスを長年運営してきた企業である。



2018年2月、Clarion EventsとGlobal Sourcesは統合し、Blackstoneのファンドが統合グループを支配する体制となった。



統合時点でグループ全体では年間約200イベントを運営し、売上高は3億ポンドを超える規模となった。



この統合が現在のClarionを理解するうえで重要なのは、「アジアの展示会が増えた」というだけではない。



Global Sourcesが持っていたのは、



リアル展示会



と、



オンラインBtoBソーシング



を組み合わせる事業モデルだった。



現在もGlobal SourcesはClarion傘下のアジア事業として、コンシューマーエレクトロニクスや国際調達市場を中心に展開している。



つまりClarionはこの段階で、



「人を展示会へ集める会社」



から、



「リアルとデジタルの双方で売り手と買い手を結び付ける会社」



へ事業領域を広げた。



6. PennWell買収で専門メディアと北米産業市場を一気に取り込んだ



Global Sources統合と並んで重要なのが、2018年のPennWell Corporation買収である。



PennWellは米国オクラホマ州を拠点とするBtoBメディア・イベント企業だった。



買収時には約550人を雇用し、世界で40以上の展示会・カンファレンスを運営するとともに、約130の専門メディアを持っていた。



その事業には、




  • DISTRIBUTECH

  • POWER-GEN International

  • FDIC International

  • Oil & Gas Journalなどの専門メディア



が含まれていた。



この買収によってClarionは、北米における、




  • 電力

  • エネルギー

  • 消防・救急

  • 産業技術



などの専門市場へ大きく進出した。



現在のClarionが「Energy Transition」「Public Safety」を主要事業分野としている背景には、このPennWell取得が直接つながっている。



同時に重要なのが、PennWellが専門メディアを大量に持っていたことである。



展示会だけなら顧客との接点は開催日前後に集中しやすい。



専門ニュース、記事、メールマガジンなどを持つことで、年間を通じて同じ業界関係者と接触できる。



これは現在Clarionが財務資料で掲げる、



「events、digital products、media、data capabilitiesを組み合わせる」



という戦略につながっている。



7. 北米・アジアへ広がり、「一つのイベント会社」から専門市場のポートフォリオ企業へ



2018年以降もClarionは買収を続けた。



北米ではInsureTech Connect、Mobile Apps Unlocked、Coffee Fest、Affiliate Summit、Rose City Comic Conなどを取得し、保険テクノロジー、モバイル、飲食、小売、ファンイベントといった新しい市場へ事業を広げた。



アジアでは2019年にDesign ShanghaiとDesign China Beijingを取得。



現在はDesign Shanghaiのほか、GovWare、Enlit Asia、InsureTech Connect Asiaなども展開している。



また、Clarionは既存ブランドを新しい国へ展開する「geo-cloning」を現在の正式な成長戦略の一つとしている。



これはClarionが2000年代から行ってきた海外展開を、より体系化したものと見ることができる。



例えば、




  • InsureTech Connectを米国からアジアや欧州へ展開する

  • DSEIを英国だけでなく日本へ展開する

  • 既存のSuper Brandを成長市場へ持ち込む



といった動きである。



DSEI Japanのような展示会は、その典型である。



Clarionにとって現在の国際化は、「海外来場者をロンドンへ呼ぶこと」ではない。



専門市場で確立したブランド、運営ノウハウ、顧客ネットワークを、新しい市場そのものへ展開することになっている。



8. コロナ禍が「展示会場の規模」ではなく「接続の質」を重視する転換を加速した



2020年の新型コロナウイルス感染拡大は、リアルイベントを主要事業とするClarionにも大きな影響を与えた。



各地でリアル展示会が中止・延期されるなか、Clarion North Americaはオンラインイベント、バーチャル製品、デジタルコンテンツなどへ事業を広げた。



その中で特に現在につながる動きが、2020年のQuartz Events取得である。



Quartz Eventsは、企業の上級管理職などを対象にした招待制のExecutive Summitを運営し、あらかじめ参加者同士の1対1ミーティングを設定するビジネスモデルを持っていた。



コロナ禍ではこのモデルをバーチャルへ移行し、オンラインでも商談機会を提供していた。



ClarionはQuartz取得時、同社の「guaranteed meetings」モデルを高く評価していた。



さらに2021年にはConsero Groupと提携し、役員層を対象とする少人数のイベントやラウンドテーブルを加えた。



ここでClarionのイベント価値の考え方が変化している。



従来の大型展示会では、



何万人集めたか

何社出展したか

何平方メートル販売したか



が重要な指標になりやすい。



1対1型イベントでは、



誰と誰を会わせたか

その面談に商談価値があったか



の方が重要になる。



これは現在のClarionが掲げる「making every connection count」という考え方へ直接つながっている。



9. Clarion Connectの誕生で「展示会会社」から「商談を設計する会社」へ



この変化が事業部門として明確になったのが2024年である。



Clarionは1対1型イベントを運営するEaton Hallを買収すると同時に、新部門「Clarion Connect」を立ち上げた。



Clarion Connectには、




  • Quartz Network and Events

  • Consero Events

  • Connect Events

  • Eaton Hall



など、1対1接続を重視する事業が集約された。



発足時点でClarion Connectは年間80以上のイベント、サミット、オンラインネットワーク、フォーラムを展開し、年間6万件以上の接続機会を提供するとしていた。



この事業は、従来型の展示会とはビジネスモデルが異なる。



展示会では多数の企業と来場者を同じ場所に集め、参加者自身が商談相手を探す。



Clarion Connectでは、事前に条件やニーズを確認し、主催者側が商談相手を選び、ミーティングを設定する。



つまりClarionは、



「人を集める」



だけではなく、



「誰と誰を会わせるかを設計する」



ところまでイベント主催者の役割を広げた。



この変化は、現在のBtoB展示会産業が「来場者数」から「商談成果」へ評価軸を移していることとも重なる。



10. エネルギー分野では「製品展示」から投資・事業開発の場へ拡張



現在Clarionが重点分野としている一つがEnergy Transitionである。



PennWell取得によってDISTRIBUTECHやPOWERGENなどを加えた後も、エネルギー関連事業への投資を続けている。



2024年には米国のInformation Forecast(Infocast)を買収した。



Infocastは再生可能エネルギー、蓄電池、送電、データセンター電力などの分野で、投資家、開発会社、金融機関、電力事業者などを集めるイベントを展開している。



Clarionはこの買収について、Infocastのイベントが特に「deal-making」を中心としている点を強調している。



これは展示会ビジネスの変化を考えるうえで重要である。



従来の電力展示会では、発電設備、送配電設備、制御システムなどの製品展示が中心になりやすかった。



エネルギー転換が進む現在は、




  • プロジェクト開発

  • 投資

  • 資金調達

  • 電力購入契約

  • 規制

  • インフラ整備



など、技術だけでは完結しないテーマが重要になっている。



Clarionは大型展示会と小規模なディールメーキングイベントを同じエネルギーポートフォリオへ組み込むことで、産業の異なる段階の顧客接点を取り込んでいる。



11. 現在の事業は過去からどうつながっているのか



現在のClarion Eventsを見ると、ICE、DSEI、DISTRIBUTECH、InsureTech Connect、Design Shanghai、FDIC International、Global Sourcesなどは互いに全く異なるイベントに見える。



しかし企業史をたどると、共通する事業構造が見えてくる。



Clarionが長年蓄積してきた資産は、展示会場や展示装飾ではない。



重要なのは、




  • 専門展示会ブランド

  • 出展企業との長期関係

  • 業界のバイヤー・意思決定者データ

  • 専門メディアとコンテンツ

  • 海外拠点

  • 業界団体とのパートナーシップ

  • イベント運営人材

  • オンラインコミュニティ

  • 商談マッチングのノウハウ



である。



2005年にICEにつながるゲーミング事業を取得したことで、特定業界のブランド価値を蓄積するモデルが強まった。



2004年以降のM&Aによって海外展開力が加わった。



2018年のGlobal Sources統合によってオンラインBtoB市場が加わった。



PennWellによって専門メディアが加わった。



Quartz、Consero、Eaton Hallによって1対1商談を設計するノウハウが加わった。



現在はそれらを統合技術・データプラットフォーム上で運営し、AIや自動化も利用する方向へ進んでいる。



つまりClarionの現在は、



展示会を開催する

↓

専門業界のコミュニティを持つ

↓

そのコミュニティを海外へ展開する

↓

メディア・デジタルでも接触する

↓

必要な相手との商談そのものを設計する



という過去の事業拡張の積み重ねによって形成されている。



12. 展示会でClarion Eventsを見ると何が分かるのか



Clarion Eventsはメーカーではないため、Clarion自身のブースで「製品を見る」というより、同社が主催・運営するイベントの構造を見る方が現在の事業を理解しやすい。



特に注目すべきなのは、大型展示会、コンテンツ型カンファレンス、1対1イベントをどのように使い分けているかである。



ICE――専門展示会ブランドを国際的な産業コミュニティへ育てる



ICEはClarionが2005年のATE取得によって強化したゲーミング分野の主要ブランドである。



現在では単なるカジノ機器展示にとどまらず、オンラインゲーミング、決済、テクノロジー、規制、投資なども含む国際的な業界イベントとなっている。



Clarionが「一つの展示会ブランドを長期的に育てる」という戦略を見るうえで代表的なイベントである。



DSEI――ブランドを海外市場へ展開する



防衛・セキュリティ分野ではDSEIを展開している。



DSEI Japanは、日本で開催される大規模な統合防衛イベントとして運営されている。



これはClarionの現在の戦略である「geo-cloning」を理解しやすい例である。



英国で形成した展示会のブランド、海外企業との関係、運営ノウハウを、新しい市場へ持ち込んでいる。



DISTRIBUTECH――展示会と専門メディアの統合を見る



北米のDISTRIBUTECHは、PennWell買収によってClarionに加わった電力・送配電分野のイベントである。



現在の北米エネルギー事業では、DISTRIBUTECHやPOWERGEN系イベントだけでなく、Factor Thisなどの専門メディアやInfocastの投資・商談イベントも組み合わされている。



ここを見ると、Clarionが一つの産業に対して、



ニュース・コンテンツ

+

大型展示会

+

カンファレンス

+

小規模商談イベント



を提供する方向へ進んでいることが分かる。



Clarion Connect――展示面積ではなく「商談件数」を商品化する



展示会関係者にとって特に注目したいのがClarion Connectである。



大型展示会では来場者数や出展面積が規模を示す指標になる。



Clarion Connectでは、事前に設定された1対1ミーティングそのものが重要な商品となる。



これは、今後の展示会主催会社が単に「来場者を連れてくる」だけでなく、



「出展企業に適切な意思決定者との商談を提供する」



ところまで責任範囲を広げる可能性を示している。



13. Clarion Eventsの変遷が現在の展示会業界に与えている影響



Clarionだけが展示会業界の国際化やデジタル化を進めてきたわけではない。



Informa、RX、Messe Frankfurtなど、多数の大規模な国際主催者が同様にイベントのグローバル化、データ化、年間コミュニティ化を進めている。



一方、Clarionの変遷からは現在の展示会産業における三つの重要な変化が読み取れる。



専門展示会ブランドが「買収できる事業資産」になった



Clarionの成長は、新規展示会の立ち上げだけではなく、多数のM&Aによって実現してきた。



ICE、PennWell系イベント、Design Shanghai、InsureTech Connect、Infocastなど、それぞれの市場で既にコミュニティを持つブランドを取得し、グループ内で拡大している。



このモデルでは展示会の価値は、会場設備ではなく、



「その名前を掲げれば、業界の誰が集まるか」



にある。



展示会ブランドそのものが企業の重要な無形資産となっていることが分かる。



「規模」だけでなく「接続の質」が展示会商品の一部になった



Clarion Connectへの投資は、展示会業界のもう一つの変化を表している。



従来は多くの来場者を集めるほど出展企業に価値があるという考え方が中心だった。



一方、特にBtoB市場では、1万人の一般来場者より、購買権限を持つ100人との適切な商談の方が高い価値を持つ場合がある。



Clarionが事前設定型の1対1イベントを事業部門として拡大していることは、展示会業界の評価指標が来場者数から商談成果へ広がっている一例である。



イベント会社とメディア会社の境界が薄くなっている



Global SourcesやPennWellを通じて、ClarionにはデジタルBtoB市場や専門メディアが加わった。



現在の財務資料でも、ライブイベントを「digital products and publications」が支える事業構造と明記されている。



展示会の開催期間が年間数日であるのに対し、メディアやオンラインコミュニティなら年間を通じて顧客と接触できる。



その結果、展示会企業は、



「イベント開催会社」



から、



「専門産業のオーディエンスを年間を通じて運営する会社」



へ変化しつつある。



14. 今後、展示会でClarion Eventsを見る際に注目したいポイント



2026年時点のClarionの事業方針を見る限り、今後は特に四つのテーマが重要になる。



Super Brandsをどこまで世界へ展開するか



Clarionの最新財務資料では、Super Brandsがグループのcontributionの63%を占め、今後の最大の成長機会と位置づけられている。



同社はこれらを新しい地域へ展開する「geo-cloning」を明確な成長戦略としている。



今後、ICE、DSEI、InsureTech Connectなど既存ブランドがどの市場へ展開されるかを見ることで、Clarionが有望と判断している地域や産業を読み取りやすい。



展示会と1対1商談をどう組み合わせるか



Clarion Connectは現在、独立した1対1イベント事業として展開している。



一方、大型展示会でも出展企業から求められるのは、単なる来場者数ではなく、適切な顧客との商談である。



今後、大型展示会の中へClarion Connect型の事前マッチングや商談保証モデルがどの程度組み込まれるかは重要な注目点である。



データ・AIを商談成果へどう結び付けるか



2026年1月期の財務資料では、Clarionが統合されたテクノロジー・データプラットフォームへの投資に加え、AIと自動化を重点的に活用していることが示されている。



ただし現時点では、ClarionがAIそのものを一つの主力製品として販売していると捉えるより、イベント運営、顧客体験、データ活用、業務効率化を強化する基盤として導入していると見る方が適切である。



今後注目したいのは、AIによって、




  • どの来場者と出展企業を会わせるか

  • どのリードを優先するか

  • どのコンテンツを推薦するか

  • 出展ROIをどう評価するか



といった「接続の質」がどこまで改善されるかである。



展示会のサステナビリティをどこまで実装するか



ClarionはNet Zero Carbon Eventsに参加し、2019年を基準に2030年までに排出量を50%削減し、2045年までにネットゼロを目指している。



2026年1月期の財務資料では、2019年比でグループ全体のScope 1・2・3排出量を35%削減し、売上高100万ポンド当たりのCO2eを49%削減したとしている。



また、再利用型展示ブースへの移行や、Better Standsの取り組みも支援している。



展示会主催者にとって今後は、「サステナビリティをテーマとして会議で語ること」だけでなく、実際のブース施工、エネルギー、物流、廃棄物をどこまで変えられるかが問われる。



Clarion Eventsの約80年にわたる変遷を振り返ると、一貫しているのはイベントの形式そのものではない。



1940年代にはロンドンの展示会場を起点とするイベント運営だった。



2004年の独立後は専門展示会ブランドを買収・育成する会社になった。



その後、海外市場、専門メディア、オンラインBtoB市場、1対1イベントを取り込んだ。



そして現在は、



大型展示会

+

専門コンテンツ

+

デジタルサービス

+

1対1商談

+

データ・AI



を組み合わせている。



その流れを整理すると、



展示会運営

↓

専門展示会ブランド

↓

グローバルポートフォリオ

↓

専門メディア・オンラインBtoB市場

↓

1対1ビジネスマッチング

↓

データを使った「接続」ビジネス



という変化が見える。



現在Clarion Eventsの展示会を見る際には、会場の大きさや出展企業数だけを見るのでは十分ではない。



「どの専門コミュニティを持ち、どの意思決定者を集め、どのような方法で売り手と買い手を会わせ、その接点を会期後までどのように事業化しているのか」



を見ることが、Clarion Eventsの現在の強みと、展示会業界の今後の変化を理解するうえで重要になっている。



参考情報




  • Clarion Events公式サイト「About Us」

  • Clarion Events「Reports and Accounts / Comet Bidco Limited Consolidated Financial Statements 2025/26」

  • 英国Companies House「Clarion Events Limited」

  • Clarion Events「EMEA」「Asia」「North America」各地域情報

  • Blackstone「Blackstone Acquires Clarion」

  • Blackstone「Clarion Events completes merger with Global Sources」

  • Clarion Events「Clarion Events Expands North American Presence with Acquisition of PennWell」

  • Clarion Events「Clarion Events Acquires Quartz Events」

  • Clarion Events「Clarion Events Enters Partnership With Consero」

  • Clarion Events「Clarion Events Acquires Eaton Hall, Launches Clarion Connect」

  • Clarion Events「Acquisition of Renewable Energy Events Organiser Infocast」

  • Clarion Events「Clarion Sustainability」

  • HgCapital / Clarion Events売却関連資料

  • Providence Equity Partners「Clarion Events」

  • Reuters:BlackstoneによるClarion Eventsの売却検討に関する2024年報道

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