広告代理店(タンデムの大賀氏による寄稿)

広告代理店には小規模の会社から大手迄、20余年に渡りお世話になって参りました。昨今、働き方、談合等問題になっており負のイメージだけが焼き付けられてしまうのは残念至極。

私が最初に繋がりを持ったのは小規模の広告代理店でした。ある日、お電話頂き、財団法人であるご出展者がノルウェーの展示会に出展されるということで、施工の見積もり依頼でした。伺って驚いたのは過去に三度失注した案件でした。私がその案件は、施工会社が決まっているので受注は非常に難しい旨ご説明したところ、“もうほゞ受注は決まっているのでこの図面で見積もりをお願いします”とのこと。お問合せ頂いて、無下に断るのも失礼と思い、見積もりを提出したところ、後日“受注できました”との連絡。この財団法人はある施工会社と繋がりが強く、この状況を変えるのは至難の業。繋がりの凄さを学びました。驚天動地。

その2,3年後、何年も施工している得意であるメーカーからお電話頂き、次回の展示会からはある大手広告代理店を通して仕事をするよう指示を頂きました。最初、わけがわかりませんでしたが、それから暫く打ち合わせをしていくうち、状況がわかりました。そのメーカーの社長の姻戚にあたる方がその広告代理店に入社され、その関係でワンクッション置き、間接的に仕事を請け負うことになったのです。改めて繋がりの凄さを学んだ次第です。

あの組織力には圧倒されます。いろいろな能力のある人達の集団でもありますし、同時に、親、親戚等の伝手で入社する方も。伝手入社には当然見返りも期待できます。それらがうまく機能し、頑張り精神の空気が張り詰める中、最強軍団になります。本気で受注する気持ちがある時あらゆる手段を講じてとっていきます。                                   

前年のものをベースに、または今迄の経験をベースに月月火水木金金、目標に向け、すなわちプロジェクトの成功に向け真摯に向き合い、結果を出すという私が今迄やってきた術とは大違い。広告代理店はオリジナリティ、独創性を追求していきます。
ドイツでも同じ。ドイツのとある大手代理店も日本と同じスタンスで仕事をしていました。その広告代理店の営業の方は知己にしていた日本人女性と結婚していて、幾度か3人で食事を共にする機会がありました。いろいろと話を伺いましたが、その中で一番印象に残っているのは、彼がBMWのブース(四輪)の担当者の頃のエピソード。BMWの担当から前回と同じブースをつくるよう指示が来たところ“それでしたら他に発注して下さい”、と答えたそうです。自分の力量が発揮できないためです。私も一度言ってみたいものです。

広告代理店とお付き合い頂いて勉強になること、楽しいこと、いいことばかりではありません。地方にある準大手の広告代理店と仕事をしていたある日、打ち合わせに午前8時半に来るように、依頼されました。始発の新幹線に乗り余裕を持って受付に。そして待つこと30分。担当は待てど暮らせどいらっしゃいません。このように自分の立場を少し勘違いしている方もいらっしゃいました。私は30分後席を立ち東京に戻りました。ご担当者から謝罪の電話を頂きましたが仕事はお断りしました。その後取締役が謝罪にいらっしゃいましたが覆水盆に返らず。しかし、このプロジェクトも徒労には終わりませんでした。ブースの図面を引いた方が、私の自動車免許取得時のあこがれの車のデザインをした方でいろいろな裏話を伺えました。自動車好きの私にとって財産となっています。

広告代理店と仕事をしていて困ることのひとつは、仕事に熱心なばかり、あまりに細かく、日本のブース施工ではそのスタンスで通じるのかもしれませんが、海外、特にヨーロッパ、アメリカでは職人が気持ちよく働かなくなることもあります。
例えば照明。何度も何度も位置、角度、個数を変えさせられ、また元に戻したりと、電気屋を怒らせたことも一度ではありません。展示台他の変更依頼も多く、特にドイツの施工会社からは“もう二度とやらないぞ”と脅されたことも。途中で大工が怒って帰ってしまい、呼び戻すのに本当に大変な思いをしたこともありました。でも真摯に事に臨み、職務を遂行する広告マンの姿をみると、見習うべき存在でもあります。

30余年この仕事を続けてきました。数々の失敗を肥やしにこれからも前に進んでいくのみです。前進前進また前進。

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