No 現場監理, No Life!(タンデムの大賀氏による寄稿)

海外展示会施工を生業にして早や、30余年。過去にはバブル崩壊、アジア通貨危機、米国同時多発テロ、Sars,リーマンショック等、色々と荒波が押し寄せ、我々は乗り越えて参りました。

コロナ禍もやっと落ち着きつつありますが、これはわが生涯、最大の危機でした。これからもこれ以上の危機が訪れないとは断言できませんが、とりあえずはこれから少しづつ前進できそうです。本当にやれやれです。

展示会の仕事は一般建築と違い、現場施工の期間が短くやり直しがきかないことが多い為、当然万全の備えで現場に臨むわけですがそれでも施工会社が我々の図面を理解する時、我々の設計がイメージしているものと少し食い違うこともあります。その時は短期間でうまく折り合う接点も見つけ、仕事を進めていきます。

また得意は得意で私共が図面通りにつくったものの、想像されていたイメージと異なり、現場でつくり直しを依頼されることもあります。現場で短期間に得意の望むかたちに仕上げることが我々の仕事ですが、ここでも時間と費用を考え、うまくお互い妥協点をさぐりお互い納得のいくかたちで仕事を進めていきます。

食い違いは、他にも多々あります。海外では我々日本人のスタンダードが通用しないこと。日本では、“お客様は神様”であり、極力、得意の意に沿うよう頑張ります。ところが、ドイツの諺にある通りドイツでは“お客様は王様”なのです。ワンランクもツーランクも下。いいえ、職人は実際は”同等”と考えてお客様に接します。ですから何とかそのギャップを埋めるべく施工会社と得意の間に立ち、双方満足できる結論を見出すのも我々の大きな仕事です。

施工会社に何でも押付けはできません。彼らは彼らの伝統、哲学があるのです。それでもドイツ人はまだヨーロッパの中では分かり合える仲。フランス人なんか仕事に向き合う姿勢が違い、どんなに忙しくとも昼休みは絶対とるので、例えば電気のトラブルが昼休み中にあってもホールの電気屋は昼休みは部屋に鍵を掛け出てきません。外からは中で食事中の楽しい会話がきこえてきます。通電できずご出展品の調整ができなくても知ったことではありません。ドアをどんどんたたいても結果変わらず。勿論、午後、仕事が途中でも定時退社。ドイツの電気屋はパンをかじりながらご出展者の希望に沿うようランチタイムも頑張ります。

現場での仕事のひとつに得意に盗人への警戒心を持って頂くように話すこと。パスポートでも盗難に遇ったら帰国もままなりません。無論、会場だけでなく、街に出ても油断はできません。日本では“人類皆兄弟”感覚で生きていけますが外国ではこうはいかないのです。得意の被害は数知れず、私はいろいろなケースを得意から伺い、学んだつもりですがそれでも、10回以上被害に遇っています。

現場では特にドイツと中国ではご注意の程を。ドイツではバスに乗った窃盗団が背広を着て、会期中に日本ブースを回っていたこともございます。これはお縄になりました。アメリカはユニオンが仕切っている為、盗難は非常に少なく、会期中もかなりのご出展者がPCを展示台に残したまま会場を後にします。しかし、アメリカも街中では注意せねばなりません。

会期中、一段落した後、又は展示会が終わってから得意のショッピングのお供をしたり、日帰りの小旅行をすることもあります。そこでしか買えないものをご紹介したり、各国の事情をご紹介したりするのも現場監理の仕事の一環。楽しみでもあります。得意もそれ迄頑張ってこられたのですから暫し、仕事を離れショッピング、文化の吸収もいいものです。

現場監理を通じ、色々と吸収し、成長することが叶いました。得意、職人に感謝です。得意に現場でブースをご確認頂き、満面の笑みで接して頂いた時は、この仕事を続けてきて本当によかったなあと感ずる瞬間です。これからも日々是決戦、頑張って参りたいと思います。

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