アメリカの現場(タンデムの大賀氏による寄稿)

先日寄稿した“インドの現場”、カルチャーショックを楽しめるようになりましたが、今回の“アメリカの現場”はこれまた別の意味でのカルチャーショックの連続、毎回試練に立ち向かうことになります。



世界の展示会を3つに分けるとすれば、アメリカの展示会、インドの展示会、そしてその他の国の展示会です。



アメリカの展示会の特徴として、ユニオンという組織があり、輸送を含み、展示会の全てを取り仕切っています。管理が行き届いている為、盗難に遇う確率が非常に低いことがメリットに挙げられます。会期中、パソコン等は夜間、出しっぱなしでも問題になることは殆どありません。ちなみに経験上、盗難に遇う確率が非常に高いのは、中国とドイツを中心としたEU諸国。ちょっとしたすきに盗難にあいます。日本人からみると彼らの倫理観のなさには呆れるばかりです。



ユニオンの管理の仕組みは職人と一杯やった時にいろいろと話をききました。まずは高額な施工費。アメリカで施工に掛かる費用は最低ドイツの倍、場合によっては4倍位になることもあります。ユニオンに対する“上納金”。そして現場の人間に対する手厚い手当が厚い為。例えば賃金は休祭日の残業代を例にとると職人一人/時間がおおむね$100を越えます。30%が上納金、残りの70%は彼らに入るとのこと。私は逆の割合だと思っておりました。ですから“酒、ドラッグ、女に溺れなければ3,4年で家が建つ“そうです。飲みに行った日の昼間の出来事が話題になりました。作業を頼んだ際、倉庫に脚立を取りに行きました。短い脚立を一度持ってきて、その長さでは仕事にならないからと再度倉庫へ行き長い脚立に交換。これは時間稼ぎの常套手段とのことでした。アメリカ人は個人単位では気さくでいい人間が多く、神に近い人間もいるのですが、組織で動くと狡猾で日本人なんかひとたまりもありません。平気で人を騙すことをやります。戦後の日本占領政策然り、バブル崩壊後の竹中他を使った日本経済破綻策然り。



現場では基本、ご出展者は作業をしてはいけません。越権行為となります。パネルを貼ることも、電気の接続も。ユニオンの作業を侵害することはあってはならないことなのです。特に合衆国東部ではこの掟に悩まされます。作業の権限はユニオン側にあります。工作機械の展示会で得意が三相電源の配線をしていたところ、宇宙服のようなものを身に着けた人間が来ブースに来て笛を吹かれ、作業中止命令が下されました。よくわかりませんが感電死しないように絶縁服を身に着けていたのでしょう。絶句しました。



次の特徴。これはクレジットカードによる無茶苦茶な決済。アメリカはご存知のようにカード決済社会です。申請書にカード番号を記入し、電気他の費用が決済されます。現場での追加費用も然り。問題になるのは過請求と誤請求。例えば、私が発注した切り文字をサイズを間違って持ってきたため、修正させたところ、追加費用として請求されていました。皆様も請求書のチェックは疎かにしないで下さい。アメリカではチェックして誤りをしっかりと説明する殆どの場合、納得して金額は訂正してもらえます。



アメリカの現場は日々是決戦。決戦好きな私にとって早く現場に戻りたい気持ちで一杯です。